年始の挨拶を早々に済ませるはずが、気づけば半月経っていました。
今年の年末年始は私にとって特別でした。
何層もの感情が絡み合って何もアウトプットできない状態だったのです。
78歳の両親が静岡で中華の飲食店を営んでいましたが、昨年の暮れに店を閉めました。
最後の3日間は普段の4倍から7倍の売上で厨房はてんてこ舞い!
両親は史上稀に見るヘタレ具合で「まだ続けたい」という未練はどこかに吹っ飛んだ様です(笑)。
私が1歳になる直前に開店したのでちょうど50年営業したことになります。
父はまだ続けたいとギリギリまで主張していましたが、経済的にも母の体力も限界であることを理解してもらうことにかなり長い年月をかけ、ようやく父が折れた形でした。
その決断をするに至るまで、時に体調を崩すほど私は悩みました。
自分のことならともかく、血縁とは言え他人(ひと)のこと。
ましてや、相手は老いたとて、意思も実績もある成人。
子供の進路の決断とはまた違った気働きが必要となります。
しかし、閉店から2週間経った今、父は新たな就労先を得て、母は穏やかに家で過ごしています。
物心着いてからですから45年近く持ち続けた「母をラクにさせてあげたい」という願いがやっと叶ったのです。
人生の目標の一つ、いえ、夢がようやく実現できました。
これから生活を安定させるためいくつか新たな課題が待ち受けていますが、今、この上ない安堵感と幸福感を味わっています。
自分が経済的に余裕できてつかの間の贅沢をしたとしても、私の頭の片隅には常に母の苦しそうな顔がこびりついていて、罪悪感にさいなまれていたのです。
「本当の自由は親がいなくなってから」などと言う人がいて、そんなことを思いたくはないですが、全く否定できないと思いました。
栄養療法アドバイザーとして何が残念だったかと言えば、優良な店を自らの意思で失わせてしまったということです。
年老いた両親がこしらえた料理は野菜が焦げていたり具材の切り方が荒かったりと、お世辞にも美しいものではありませんでしたが、既製品をほとんど使わずに下ごしらえからほとんど自前でつくっていました。
化学調味料を使うことは最後までやめてくれませんでしたが、それを除けば、他の食品添加物は一切使わず、栄養価的にもパーフェクトでした。
ラーメンのスープのダシは豚骨、鶏ガラ、煮干し。
骨を割って髄が溶け込ませたスープはアミノ酸の宝庫。
コラーゲンはもちろんたっぷり、解毒作用のあるグルタチオンも豊富で、グルタミンが現代人に重要な腸粘膜の保護までしてくれます。
アメリカでも流行った「ボーンブロス」(骨のスープ)の人気の所以です。
ダシを取らずにスープの素を使うような料理には出せないパワーです。
父がよく口にしているのは、いいお客様に恵まれたと。
車を1時間走らせて来てくださるお客様もいて、閉店前の5日間に3日も家族でいらしてくれました。
独立したお子さんたちは東京と名古屋からわざわざ駆けつけるという、なんとも恐縮なお話です。
そんなお客様は時間がかかるといっても、嫌な顔をせずに待っていてくれるありがたい存在なのですが、中には残念なお客様もいました。
「10個で10種類の注文」が珍しくなかったのです。
普段料理をする方ならわかってもらえると思うのですが、1回の食事で10種類の料理を用意することはありませんよね。
せいぜい主菜、副菜、汁物の3、4種類です。
調理時間は個数というより、種類ごとに手間が加算されます。
一昔前は、数種類に抑える努力をお客さん側でしてくれていたのですが、効率を徹底的に重視したチェーン店が台頭し、その痛手を個人経営のお店も負わされることになりました。
チェーン店は手軽に安価で安定した食事が楽しめるところですが、徹底的にコストダウンさせた素材はいったいどのように用意しているのか、私としてはとても不安に感じることがあります。
野菜で言えば農薬・化学肥料・洗浄時の殺菌剤、
肉で言えばホルモン剤・抗生剤・不自然な飼料、
調味料で言えば保存料・化学調味料をはじめとした食品添加物・たん白加水分解物のような不自然で風味の強い調味料、
油でいればトランス脂肪酸・酸化しまくったオメガ6脂肪酸・・・
という可能性が高く、よくもケチをつけられたものだと自分でも感心しますが、セミナーでも「チェーン店より個人経営の店」というアドバイスをさせていただいています。
食に対する想像力の欠落。
これは、日々栄養に携わる活動の中で常に感じることです。
生きることに真摯に向き合えば、食品の栄養価、素材や調理法を知って実践する必要があります。
「忙しくて考えたこともない」という人も少なくないでしょうが、なんのための忙しさでしょうか?
かつては会社の鬼畜だった私にもその感覚はわからないではないですが、生活習慣病やガンとの闘病を甘んじて引き受ける覚悟はできているでしょうか。
この50年で何が一番スゴイと感じたかと言えば、長いこと時間をかけて母が父を変えたことです。
私が子供の頃は、父は麻雀に明け暮れて仕事をろくにしないどうしようもない人でした。
家族に手を上げることも少なくはなく、私は本気で殺意を持っていました。
それが今では、甲斐甲斐しく家事を一人でこなして、時に母のマッサージまで施しています。
80歳近くにも関わらず店はまだ続けたいと言うほど仕事が好きになっていました。
離婚という選択をせずに良くも悪くも母も父に依存している部分があったことは事実であり、結果論だと言えばそれまでですが、「人は変わらない」という私の中の常識を見事にぶち破ってくれました。
栄養療法に携わっていると、結局はその相談者の意思に寄るところが大きいので残念な気持ちになることも時にはあります。
でもそれ以前に、私はその方を信じていただろうかと・・・
「人は変わる。信じよう」
2020年の抱負が決まりました。
まずは私自身が変わらなければ。
行動あるのみです。
こんな私ですが本年もどうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m