女性ホルモン編の続きです。
今回は女性を美しくするエストロゲンが減る理由と対策についてと予告しましたが、そもそも女性ホルモンはどこでどれくらい作られるかご存知でしょうか?
2月にピルビスワークの体験レッスンに参加して、シャーシャーと「肝臓?」と言ってしまった私が聞くのもなんですが、正解は卵巣です。しかも一生のうちで生成される量はわずかスプーン1杯程度だそうです。
そんな貴重な女性ホルモンが減ったら大変なことですよね?
よく「ストレスでホルモンバランスが乱れる」と聞きますが、それは具体的にどんなことなのか、というところから始めますね。
女性ホルモンはどのように分泌されるのか?
女性ホルモンは卵巣の働きだけでなく、脳の指令で分泌されています。
視床下部が「社長」とすれば、下垂体は「部長」、卵巣は「社員」。
脳の視床下部からパルス状に分泌されるGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)の指令によって生理周期などに合わせて変化するように調整されています。
GnRHの放出を受けて、下垂体から今度はFSH(卵巣刺激ホルモン)、LH(黄体形成ホルモン)というホルモンが出て卵巣を刺激し、卵巣から女性ホルモンが分泌されます。
実は、生活習慣や心身の状態によりこのパルス活性が乱されることがわかっています。
エストロゲンが減少がする原因
精神的ストレス
上記でも触れたように、ストレスは視床下部でのGnRHのパルス活性を低下させる原因のひとつです。
職場環境の変化や失恋など、非常にショックなことがあって生理が止まってしまったという現象は、脳の視床下部や下垂体が心因的な影響を受けやすいためです。
低たんぱく・低コレステロール
ホルモン自体がタン白質からつくられているため、低タン白質の食事を続けていると、必然的に女性ホルモンの活動は弱くなります。また、コレステロールは女性ホルモンの材料にもかかわらず、残念なことに「コレステロールは低いほうがよい」と言われ続け、低コレステロールのリスクが知られていません。実際、コレステロールが低いと死亡率が高いというデータもあり、不妊の原因のひとつとも言われています。
また、コレステロールは脂質であり単体では血液内に存在できず、必ずタン白質(リポたんぱく)に包まれる必要があるため、コレステロールをくまなく全身に運ぶという意味合いでもタン白質は重要な役割を果たします。
痩せすぎ
BMIが17.5を切ると女性ホルモンがうまく機能せず無月経になる可能性があります。これを体重減少性無月経と言いますが、エストロゲンが低下し、長期にわたると骨量も低下します。ただし、体重が増えればほとんどのケースで改善が見込めます。ちなみに、BMI22のときが最も病気になりにくいと言われています。
*BMI計算方法: 体重 ÷ (身長× 身長)
標準は18.5以上25未満
例えば身長152cm、体重43kgであれば、43÷(1.52×1.52)で、BMIは18.6
加齢
女性は40歳を過ぎると体内の女性ホルモンが徐々に減り、閉経を迎える50歳ごろには卵巣からの女性ホルモンの分泌はほとんどなくなります。この期間を更年期と言いますが、分泌量が急激に下がり過ぎると、いわゆる更年期障害として様々な症状が現れます。骨粗鬆症や動脈硬化など、重篤なリスクもあり軽視できません。
加齢自体はどうにもならないことですが、生活習慣を改善したり、エストロゲンの代わりをしてくれるものを代用することで症状を軽くすることが可能です。
エストロゲンを増やすためにすること
エストロゲンそのものを増やす方法と、エストロゲンの代わりをしてくれるものを補う方法の2つの方法があります。
エストロゲンやプロゲステロンを補充するホルモン療法が直接的ですが、乳がんになりやすいという副作用も完全に否定できないため、ここでは生活習慣や栄養によって改善する方法を解説します。
ストレスを最小限に
理由は2つあります。
ひとつは、過剰なストレスにさらされていると、副腎という臓器でコルチゾールというストレスホルモンを生成しストレスに対抗しようとするため、コレステロールやプロゲステロンが使われてしまいます。プロゲステロンは女性ホルモンのひとつであることは前述しましたが、プロゲステロンはエストロゲンの材料でもあるのです(女性ホルモン-1の図参照)。
一言で言うと、ストレスがエストロゲン生成の邪魔をするということです。
もうひとつは、自律神経の問題です。
ストレスによって交感神経優位の時間が長く続くと、ガン、自己免疫疾患、生活習慣病にかかりやすい状態になります。病気になっては、妊活どころではなくなりますよね。
病気までに至らずとも、体内で炎症が起きると免疫力が低くなる上に、栄養をせっかく摂っていてもしっかり吸収できなくなります。
確かに生きるために働き続ける必要はあるでしょうが、その職場、その場所でなくてはいけない理由はどれくらいあるでしょうか?
仕事に妊活に忙しいでしょうが、可能であれば休暇を取って「今後の自分にとって何が重要か」列記して優先順位をつけてみてください。そして、今していることがその重要なことの延長線上にあるか確認してみましょう。
ストレスは目に見えず受け止め方の問題と曖昧されがちですが、過剰なストレスは確実にあなたの心身を蝕みます。
適正体重を保つ
前述したように痩せすぎると女性ホルモンがうまく機能しません。BMIは22前後を目標とし、痩せ型の方でも月経が止まるほどの数値(17.5)以下にならないように注意してください。体重を増やすときには、甘いのものでなく、タン白質を積極的に摂ってください。過剰な糖はPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)になりやすくなり、これは不妊の最大の原因と言われています。
血流を良くする
血液は酸素だけでなく、栄養やさまざまな伝達物質を全身に送り届けています。
せっかく取り込んだ酸素や栄養が、血流が悪いがために各臓器に充分に届いていないとしたら正常に機能しないのは当然です。「一度出産すると次の子ができやすい」と聞いたことはありませんか?
それは妊娠・出産を経験すると子宮の周りの血管が太くなるからだと言われています。
血流をよくする方法はやはり運動です。
「ピルビスワーク」と言う骨盤体操は妊活女性に対するメニューもあり、視床下部から卵巣への指令ホルモンが出やすくなる体操など、ユニークで実践的なメニューもあるのでお薦めします。
サウナなどで体を温めると血流はそのときは良くなりますが、恒久的に血流を良くするためにはやはり筋肉を使った運動をお奨めします。筋肉にはいまだ解明されていない多くの役割があると言われていますし、有酸素運動は卵子の元気の素となるミトコンドリアを増やすと言われていますので一石二鳥です。
普段運動しない方はホットヨガなど動きがゆっくりで遅筋を使うアクティビティですとケガの心配がありません。
必要な栄養を摂取する
タン白質
妊活のみならず、健康な体を保つにはタン白質を充分に摂取することが大事です。
毎食100グラム(手のひらいっぱいに乗る程度)の魚、肉、豆類を食べてください。
大豆もむろんタン白質ですが、たんぱく合成の最初に必要なメチオニンが少ないため、動物性のタン白質を掛け合わせるとより効果的です。例えば、納豆には生卵やかつお節をいれる、という具合です。
また、ファスティング(断食)で細胞内をキレイにすることで、タン白質のリサイクル効率が上がることが分かっています。
コレステロール
コレステロールはタン白質を摂っていれば不足することはありません。
タン白質を意識的に摂っていない場合は別として、コレステロールの製造工場である肝臓に負荷がかかり過ぎていないか振り返り、相応の対策を検討してください。肝臓に負荷をかけるものは、アルコール、薬、ストレス、重金属や有害物質の蓄積、腸内での悪玉菌増殖などが考えられます。
イソフラボン
イソフラボンは豆腐、納豆、豆乳、味噌などの大豆製品に多く含まれています。
女性ホルモンであるエストロゲンと同様の働きをするといわれ、その構造も似ているので、「植物性のエストロゲン」とも言われているほどです。ホットフラッシュやめまいなどの更年期障害の諸症状を緩和することで知られていますよね。
ただし、腸内にエクオールを産生する菌がないと効果が見込めないので、イソフラボンのサプリなどをまず数週間飲んでみて自分の体質を確認したほうがよいでしょう。
また、発酵されていない大豆は自らを守るための「植物毒」をもっており、ゴイドロゲンという物質が甲状腺機能を低下させるなどのリスクをはらんでいます。また、フィチン酸が豊富に含まれているため、鉄や亜鉛の排泄を促してしまいます。
豆腐や豆乳は嗜好品として楽しむにはよいですが、毎日大量に摂取することは避けてください。
ローヤルゼリー
自然界においてローヤルゼリーにしか含まれない「特有成分」があり、そのひとつが不飽和脂肪酸の「デセン酸」です。
デセン酸は、体内に取り込まれるとエストロゲンと同様の機能をすることが分かっています。
この機能によって、乱れたホルモンバランスが調整されたり、エストロゲンに関連する健康への予防が期待されるだけでなく、抗酸化作用、美肌、生活習慣病の対策にも、好影響を与えることができます。
その他、ビタミンB群、鉄(ヘム鉄がよい)も全身の代謝を底上げするために並行して摂ることをお奨めします。
ここまでがエストロゲンが減る原因と対応策でした。
ところが、最近は逆にエストロゲンが過剰になり、それが生理不順やPMSにとどまらず、子宮内膜症などの病気に関わっていると言われています。
次回はその原因と対策について書きますね。